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2022年の短歌

「短歌人」2022年4月号 掲載歌

焼き鳥の二つ目までは喉に串突き刺すリスクを許容している たまに泣くきみの背中をつつがなくさすった夜の辛いバーボン 頷いていつもどおりと答えれば古いものから落ちていく髪 「かゆいところはございませんか?」この箇所で...
2022年の短歌

「短歌人」2022年2月号 掲載歌

朝の陽の溜まる手すりに水鳥の羽の詰まった布団をかける 見開きに敷き詰められた明朝に没入すれば寄せる頭の影 ポケットにトレンチの紐忍ばせてその先端を渋谷で摑む 週末の渋谷を歩く人と人すり抜けるコツ取り戻しつつ ...
2022年の短歌

「短歌人」2022年1月号 掲載歌

蹴破れるほどの仕切りの隙間から名前も知らぬ隣人の足 業界に骨を埋めた仲間らは通夜の席でもおはようという ホームドア撤去工事の工員は最後の人の後ろに並ぶ 普段ならあなたと入る居酒屋であなたが苦手な内臓を食む ...
2021年の短歌

「短歌人」2021年12月号 掲載歌

軽々と沖縄行きを告げてから慌てて用事があってと付ける 顔大の窓が切りとる営みはとるに足らないものとなり海 海の絵をあお一色で描いていたわたしに渡すみどりのクーピー 漕ぐ母の後ろで少女はひっそりと大きく腕を広げる空...
2021年の短歌

「短歌人」2021年11月 掲載歌

命日が近づくにつれ自堕落になる生活に君を探した 友の子の成長話に花が咲きマグロは乾く君の陰膳 墓探す君の職人仲間らにビデオ通話でどれか教える パスワード忘れ出てきた質問に忘れたはずの人の名を打つ 紅生姜と共...
2021年の短歌

「短歌人」2021年10月号 掲載歌

夕焼けに染まりはしたがかたくなに内をみせない黒ポリ袋 槽のなか放っておかれたブラジャーの色で夕陽はわたしを責める イヤホンの右と左を分けあってしてない方の耳そばだてて 人をイラつかせる専門学校を首席で卒業したのね...
2021年の短歌

「短歌人」2021年9月号 掲載歌

四週間かけて身体を駆け巡る片道切符のモデルナの旅 焼かれゆく豚のかしらをみつめゆく頭はいつかただ焼かれゆく タン塩に敷いた鉄網すり抜けて葱は黒ずみ焼く側に立つ テンキーを会社に忘れいつもより軽快さを欠くきみの打鍵...
2021年の短歌

秋にそなえる 「短歌人」2021年8月号 掲載歌

秋にそなえる 斎場の道の半ばの看板は不在の友の所在を示す 熱をもつ友のモバイルバッテリー返し忘れて形見となった 婚姻の延期の件は疫病にすべて任せておりますので 熱の出る予感の夜の指先できみの背骨の本...
2021年の短歌

「短歌人」2021年7月号 掲載歌

やわらかな記憶と共に思い出すキリンの舌はたしか灰色 あなたとの日々を下へとスワイプしコントロールとゼットで戻す ググらずにあなたに問うたマニョキンパ 錆びたシーソー夜に傾く 立ったままTシャツたたむ店員が大量生産...
2021年の短歌

「短歌人」2021年6月号 掲載歌

ブラックに香料入れる神経を疑うことから始めてみよう 空を見る少女の蛇行ひらひらと桜の軌道を描いて転ぶ ネクタイをなぜ締めるかと問われればいつか流れる血を止めるため 十年ぶりのカラマーゾフは父親が死なないま...
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