2021年の短歌 「短歌人」2021年12月号 掲載歌 軽々と沖縄行きを告げてから慌てて用事があってと付ける 顔大の窓が切りとる営みはとるに足らないものとなり海 海の絵をあお一色で描いていたわたしに渡すみどりのクーピー 漕ぐ母の後ろで少女はひっそりと大きく腕を広げる空... 2024.04.15 2021年の短歌短歌
2021年の短歌 「短歌人」2021年11月 掲載歌 命日が近づくにつれ自堕落になる生活に君を探した 友の子の成長話に花が咲きマグロは乾く君の陰膳 墓探す君の職人仲間らにビデオ通話でどれか教える パスワード忘れ出てきた質問に忘れたはずの人の名を打つ 紅生姜と共... 2024.04.15 2021年の短歌短歌
2021年の短歌 「短歌人」2021年10月号 掲載歌 夕焼けに染まりはしたがかたくなに内をみせない黒ポリ袋 槽のなか放っておかれたブラジャーの色で夕陽はわたしを責める イヤホンの右と左を分けあってしてない方の耳そばだてて 人をイラつかせる専門学校を首席で卒業したのね... 2024.04.15 2021年の短歌短歌
2021年の短歌 「短歌人」2021年9月号 掲載歌 四週間かけて身体を駆け巡る片道切符のモデルナの旅 焼かれゆく豚のかしらをみつめゆく頭はいつかただ焼かれゆく タン塩に敷いた鉄網すり抜けて葱は黒ずみ焼く側に立つ テンキーを会社に忘れいつもより軽快さを欠くきみの打鍵... 2024.04.06 2021年の短歌短歌
2021年の短歌 秋にそなえる 「短歌人」2021年8月号 掲載歌 秋にそなえる 斎場の道の半ばの看板は不在の友の所在を示す 熱をもつ友のモバイルバッテリー返し忘れて形見となった 婚姻の延期の件は疫病にすべて任せておりますので 熱の出る予感の夜の指先できみの背骨の本... 2024.03.25 2021年の短歌短歌
2021年の短歌 「短歌人」2021年7月号 掲載歌 やわらかな記憶と共に思い出すキリンの舌はたしか灰色 あなたとの日々を下へとスワイプしコントロールとゼットで戻す ググらずにあなたに問うたマニョキンパ 錆びたシーソー夜に傾く 立ったままTシャツたたむ店員が大量生産... 2024.03.25 2021年の短歌短歌
2021年の短歌 「短歌人」2021年6月号 掲載歌 ブラックに香料入れる神経を疑うことから始めてみよう 空を見る少女の蛇行ひらひらと桜の軌道を描いて転ぶ ネクタイをなぜ締めるかと問われればいつか流れる血を止めるため 十年ぶりのカラマーゾフは父親が死なないま... 2024.03.22 2021年の短歌
2021年の短歌 「短歌人」2021年5月号 掲載歌 コート着る日と着ない日の境目をグラデーションできみは彩る ぼく以外気づくことない出来物を分け目ずらしてぼくから隠す 開くはずと信じた人は諦めて反対のドアから降り 一人 駅前のパチンコ店の看板が二〇時以降の... 2024.03.21 2021年の短歌
2021年の短歌 「短歌人」2021年4月号 掲載歌 お日さまを無駄にしないで何らかの布団を干せと君は命じる マラカスでメキシコ人の元カレが俺を打つ夢見たと不敵に 暖房の風に吹かれて振れているバンジージャンプ後の黒タイツ 誇張なくグッドナイから一分で聞こえる... 2024.03.21 2021年の短歌